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    「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」

    この男が入つて来たとき、徳次の仲間だつた二人の馬喰は急にぴたりと話をやめた。そして、落ちつきのない眼で時々そつと男の方をぬすみ見た。男はぢろりと一瞥した。それは荒い皺が隈取りのやうに走つている顔だつた。だが、それきり三人の方を見ようとはしなかつた。

    「いゝ恰好で!」

    その時、彼等は近くに坐つている房一に気づいた。話に出ている鍵屋の分家とは、まさに房一の借りている家のことだつたし、その所有者は神原喜作にちがひなかつたから。

    と、房一は机の上に虫の卵の形を書いてみせた。

    「あゝ、えらかつたなあ」

    やゝあつて徳次が訊いた。

    突然、練吉の顔には一種の生気が、何となくもう一人の練吉といつた風なものを思はせる疳の気配、子供染みた我儘さが顔にさし、あのひつきりのない目瞬またゝきが止んで、切れの長い目が眼鏡の奥でぢつと線を引いた。

    「よし、それでは預つとかう」

    その「含有量」といふ言葉は富田が昨日聞き覚えたばかりのものだつた。

    「ふうん、潰れるだらうな」

    「ハッパさね」

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